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ズンガリガリガリズンガリガーリ

人生の物語や私的なことがらを140字前後で記録します。

生物はどうして死ぬのでしょう?

「生物はどうして死ぬのでしょう?身近な人を亡くすことが増える年齢になり、この疑問が中二病のように再発しております…」という質問をインタビューズの方で頂きました。はてな記法で書いちゃったので*1こちらでお答えします。

はじめに

こんにちは。最近ブログ欲がすっかり満たされてしまって、100字より長い文を書く気があんまし起きない僕です。もはや、俺今までどういう文章を書いていたっけ?状態ですが、とりあえず書き始めてみます。

テラカオス

ご質問の件、生物学らしい答えを期待されているかと思いますが、素朴な疑問が最も最も最も最も最も恐ろしいマギィーー!という格言の通り、残念ながら明確な答えを持ちあわせておりません。テロメアとかDNA修復とか活性酸素とかの老化メカニズムの話を聞きたいわけじゃないですよね。ベニクラゲという不死の生物がいましてねっていう面白動物の話もそぐわない感じ。でももう少し大きな概念の話になると、多分、生物学と言うより色即是空☆空即是色みたいな話になっていくんじゃないかなーと思います。

そっか、形あるものはそのうち全部壊れてしまうという観点からすれば、生物じゃなくたって「死」のようなものはいつか訪れますね。ダメージが蓄積されてくる。何か抗う力を使わない限り、秩序から無秩序の方向へと物事は進んでいきます。それにじっとしている鉱物とかと違って生物は化学反応の塊が動いているわけで、これを破綻無く維持するのは容易なことではありません。

性と死

さて、昔僕が同じような中二病的疑問を持っていた時にビッグコミックスピリッツで読んだ漫画でIWAMARUというのがありました。今ググるとIWAMARU/岩丸動物診療譚というタイトルみたいです。野生動物も診る獣医さんの物語です。そこで死をテーマにしていた回があったんです。おばあちゃんの死を受け止められない子どもの話。引用しているブログ(Reminder ~覚え書き~:Comics)があったので孫引しますと、

「ところがある時から、生物は自ら死を受け入れるようになった!」
「あるものと引きかえに“不死”を捨てたんです!」
「生物が不死を捨ててまで手に入れたかったもの...」
「それはキミなんだよ。」
「ほとんどの生物はより多く、確実に子孫を残すために“有性生殖”を選んだのです。」
「なぜなら、メスとオスが遺伝子を交換し合う“有性生殖”のおかげで、遺伝子のバリエーションは無限になり――」
「――バリエーションが増えれば、たとえ環境の変化で、生きていく状況が苦しくなった場合でも、自分達の子孫が生き残る可能性は無性生殖生物よりはるかに高くなるからです。」
「生物にとっては次世代こそすべて!子孫こそすべて!」
「つまりかつて死んでいった数限りないキミの先祖達は」
「キミを生かすために死んでいったんです!!」


確かにこんなセリフだったような気がします。いきなりここだけ抜き出されても伝わらないかもしれませんが、当時けっこういい話且つなるほどなあと思いました。

無性生殖、ここでは分裂で増える単細胞生物の大腸菌なんかを想定していたと思います。こいつらは老化とは無縁で不死だと考えられています。このシステムだけで細菌とかは十分に繁栄していると思うのですが、一部の生物は有性生殖のシステムを採用しました。オスとメスができて多様な遺伝情報を持つ子を作り、自らは死ぬようになりました。

無性生殖な多細胞生物の扱いがどうだったのか忘れましたけど、ひとつの(文学的な)説明であることだなと感心したものでした。

鶏と卵

でも、もう少し年取ってからの僕の考えはまたちょっと違っていて、とりあえず性が有るの無いのは脇に置いておきます。

「鶏が先か卵が先か」という言葉があるように、私たちは個体の時期と卵の時期が交互にある感じに思っています。しかし卵のもとである生殖細胞は発生の極々初期から存在している(あるいは全く途切れることがない)ので、考えようによっては、ずぅ〜っと生殖細胞(卵)の系譜があって、それをニワトリ的なものが包んでいるだけ、というようにも見えます。利己的遺伝子の「個体は遺伝子の乗り物にすぎない」の「遺伝子」が「生殖細胞」になったみたいなものですね。元ネタはドーキンスより古いのですが、説明が面倒なのでwikipedia:アウグスト・ヴァイスマンあたりを参照してください。

だから生殖細胞だけに着目してみれば単細胞生物と同様に分裂で増えている感じがする。個体(体細胞)は単なるガワであるから朽ちても仕方がない。こう書いてみると前項より中二的であるな。でもまあそんなふうに思っていました。

単細胞生物の老化

ところで単細胞生物、大腸菌は本当に老化とは無縁で不死なんですかね。大腸菌といえどもずっと生きていればダメージは蓄積されます。DNAなら修復機構が正しく働いていればその都度治すのでオッケーなのですが、タンパク質で入れ替わりの遅いやつなんかには、修復もされず活性が落ちていきます。老化です。

PLoS Biology: Aging and Death in an Organism That Reproduces by Morphologically Symmetric Division。2005年のStewartらの報告。分裂する大腸菌をじっく〜り観察したところ、二分裂したときの古い方は分裂速度が1%ほど遅くなることがわかったそうです。つまり2, 4, 8, 16, 32, …と増えていく大腸菌ですが、分裂の元になる母、祖母、曾祖母、高祖母ではやっぱり老化が進んでいるよねという報告。

さらに一ヶ月くらい前に出た論文がありました。Current Biology - Temporal Dynamics of Bacterial Aging and Rejuvenation。これは実験をしたのではなく、こういうことなんじゃね?という計算モデルです。最初に言った通り、大腸菌といえどダメージとは無縁でいられません。分裂する際にそのダメージは均一には分けず、娘細胞の片方に集中させているとしたらどうか。ダメージを請け負った方はどんどん分裂速度も落ちていくのですが、そのおかげでもう片方は元気いっぱい。つまり老化も若返りも同時に起きていることを示しています。メカニズムは全く不明ではあるがこのモデルが正しければ、単細胞生物もまた次世代を生かすために先祖(old poleを持っている側)が死んでいるということになります。

まとめ

当初の予想に反してまとまってきそうなのでまとめます。

1. 形あるものはダメージが蓄積されていっていつかは壊れます。
2. 生物は子孫を残すというかたちで自己をリニューアルさせることでこの流れに抵抗。
3. それと引き換えに親個体そのものは死にます。

以上です。ストーリー性→還元主義→シンプルという変遷を僕の中で辿ってきたのだなあと思いました。言語化してみるものですね。質問ありがとうございました。